無限の本棚 手放す時代の蒐集論/とみさわ昭仁
はい、一気読みさせていただきました。昨日Amazonから届いたのでもう発売されてるのかと思ったら、本来のリリース日は週明けなんですね。
初めてとみさわさんにお会いしたのは確か1997年の夏頃だから20年近く前になるのか。それだけ長い付き合いになる旧知のライターさんをブログで絶賛するのも違うかな~と思いつつ、コレクター仲間の一人として著書の売り上げには貢献したい・・という事で俺なりの方法論で書き進めていこうかと。
あれはとみさわさんと知り合って1年経つか経たないかの頃、何かの用事で当時立川にあった事務所へ一度お邪魔した事がある(何の用かは完全に忘れた)。その後、一杯やろうという事になり飲み屋へ行き、そこで後に出版されるとみさわさんの著書底抜け!大リーグカードの世界のベースとなる一風変わったMLBカードコレクションを見せていただく。
野球カードのコレクションと言えばナンバリングされたカード全種を揃えるコンプリート狙い、或いは好きな球団や選手のカードだけを集めるスタイルが大道・・なんだけど、とみさわさんのコレクションは全く異質で、バットが折れた瞬間を捉えたカードばかり揃えたり、打球を掴む為にフェンス際でジャンプする野手を捉えたカードばかり揃えたり、とにかく着眼点が非凡。
打者がバットをへし折る瞬間を捉えたカードは迫力あるしカッコいい。それ1枚だけならカッコいい野球カードでしかないんだけど、同じシチュエーションの異なるカードを複数並べた瞬間、全く新しい世界が生まれる。それを初めて体感した瞬間だった。だからあの日の事は今も鮮明に覚えてたりする。
とみさわさんのこの蒐集スタイルは今も健在で、例えば人喰い映画祭のグリズリー映画パチモン4連発。あれには奢り一切抜きで爆笑させられた。単純に熊が絵柄のDVDパッケージが見開きで並んでるだけなのにそれが妙に面白い。
近年のネタだと半顔コレクションですか。こちらで俺の笑いのツボを最大限に刺激したのは新幹線でしたね。
何にせよ、とみさわさんは俺にとってコレクターとしての先駆者であり、かなりの部分でインスパイアされてる。考え方の部分で共通項も多く、例えばチェックリストを重んじる事やアイテム自体に執着しない事。飽きっぽい所も同じかな。だから本書に触れた時は俺の言いたい事を代弁してくれてる!と感じた部分もあったりして。
収集癖を古生物学者の化石発掘に例える箇所とか正に目から鱗。数年前、1970年代に月刊少年チャンピオンで一時期連載された劇画ロードショーをリスト化した事があったけど、これなんか完全に過去の遺物を拾い集めて復元する事で悦に入る行為そのものだし。
俺は熱心な読書家じゃなく、今までに出版されたコレクター論の全てを読破してないから断言出来ないけど、恐らくこの本は既出のコレクター論と全く切り口の異なる、新たな蒐集観を世に提示する本だと確信してる。収集癖がある人にもない人にもご一読いただきたく。そして物を集めないコレクターという矛盾した言葉が何を意味するのか、そこにどんな魅力と愉しみが秘められているのかを知って欲しい。
ちなみに俺自身はその境地へ辿り着こうともがいてる最中。俺もまだまだコレクターとしては青二才か・・
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