幕が上がる 銀河鉄道の夜 読了
・・と言うわけで軽く感想なんぞを。
平田オリザ氏の原作も良かったな。映画以上にヒロインの心情がひしひし伝わってくる。ただ随分前に同じ事を書いたけど、それって映像と活字の特性が異なるせいもある。ストーリー上、何らかの事件が起きたとき登場人物が何を思ったか映像で表現しようとした場合、与えられる時間はせいぜい数秒。でも小説なら数10ページに渡り独白を展開させる事も可能。だから心理描写だけを考えた場合、小説の方が断然有利なのね。これはまあ仕方ない。
むしろ俺的な収穫は喜安浩平氏の脚色が如何に優れているかを実感出来た事。この原作に忠実な映像化を目指した場合、どう考えても4時間近い長尺になる。だから大筋はそのままに原作を一度解体し、削るべき箇所は削り膨らませるべき箇所は膨らませる作業が必要になるんだけど、その仕上がりが絶妙で平伏すレベル。
例えば映画版で印象的な駅のシーンや、終盤の高橋部長の決意表明のシーンは原作にない。逆に、原作ではちょいちょい描かれる恋愛的要素が全て排除され、登場人物たちが演劇へ打ち込む姿にのみスポットを当ててる。やはり桐島、部活やめるってよで脚本賞を総ナメにした才能は伊達じゃない。こうなると桐島~の原作も確認したくなる。
で、銀河鉄道の夜。俺は先入観で普通の児童小説なのかなと思ってたんだけど、つげ義春のマンガ並にシュールな作品なのね。時系列的にはつげ氏が宮沢賢治をリスペクトした可能性も否定出来ないけど。
何しろ言葉選びが独特で、悪く言えば支離滅裂・・なんだけど、それが妙な魅力を醸し出す不思議な作品。これを機に宮沢文学を掘り下げようとまでは思わなかったけど素直に面白いと感じた。
で、そういう内容だからこそ受け手が様々な解釈を出来る作品でもあるんだろうね。杉井ギサブロー監督の傑作アニメと平田オリザ氏の戯曲では解釈が全く異なるのに、どっちも魅力的。そして保留してた幕が上がるブルーレイ特典ディスクの劇中劇版銀河鉄道~を観る。こちらも感動的で凄く良かったけど、何より驚いたのは構成の巧妙さ。
観る前は普通に舞台劇を全編収録した物なのかなと思ってたら全然違って、舞台シーンや稽古シーンの未使用カットがコラージュされて一編の舞台劇が完結する構成になってる。これは特典じゃなく単体で商品化出来るレベルの作品だと素直に思ったりして。
しかし書評のつもりが最後は映画レビューになっちゃった。失礼・・
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