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COVERS Grace of The Guitar+ 森恵

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2012年1月25日 (水)

テオ・アンゲロプロス

ギリシャ映画の巨匠、テオ・アンゲロプロス監督が新作の撮影現場近くでバイクにはねられ脳内出血で亡くなったという衝撃のニュースが報じられた。本人は勿論のこと、我々シネフィルにとっても無念の一字。大好きな監督だけに交通事故とかじゃなく大往生して欲しかった。

アンゲロプロスと言えば長廻し。ただ、1カットが長いというだけならタルコフスキーも相米も溝口も長い。それでも群を抜いて全世界的に長廻しの巨匠と称されたのは1カットが長い事を強く自己主張した演出スタイル所以だろうね。

例えば旅芸人の記録。登場人物がいきなり観客に向けて語り出すんだけどこれが尋常な長さじゃなく5-6分間カットを割らずに話しかけてくる。霧の中の風景では強姦されてる(であろう)少女の乗ったトラックの荷台だけが延々映し出され、FIXじゃなくじわりじわりとトラックアップしてるから動きのほとんどない画面ながらも強烈な緊張感を生む。前記のタルコフスキーや溝口の場合、ここまで長廻しが長廻しである事を主張してないからボーッと観てると気付かない人も居る可能性があるけど、アンゲロプロスの長廻しは誰が観たって長い。そして、その長さが永遠に続けば良いと思わずにいられない程に心地良い。

個人的に好きなアンゲロプロス作品は先の旅芸人の記録や霧の中の風景、それと永遠と一日。狩人やアレクサンダー大王、シテール島への船出、こうのとりたちずさんでも忘れがたい。慎んでご冥福をお祈りします。

2011年8月29日 (月)

伊丹十三

没後14年を経て今更この人の事を語るのはズレ過ぎだなあと思いつつ、ここ数日で6本観たので私的見解なんぞを・・

とにかく俺はお葬式タンポポがダメで、部分的に好きな箇所はあるけどトータル的には全く好きになれなかった。理由は狙い過ぎた作風が肌に合わなかったから。故に三作目マルサの女の封切り時、人から薦められた時も観る気になれず、その後の作品も全く観ないまま今に至る。

それが何故突然今になって観る気になったのかと言うと、一ヶ月ほど前に中平先輩と脚本家の継田淳さんと3人で飲んだ時に伊丹作品の話になって、凄く勉強になるので観た方が良いと言われたから。その時に薦められたのがあげまんマルサの女2、その一週間後だったか先輩とサシで飲んだ時も大病人マルタイの女を薦められ、DVDを借りたはいいけど読書に明け暮れて約一ヶ月間放置。そして入院中に一気観。

端的に述べると、ここで挙げた順に観ていったらどんどん魅力が増してる気がした。ところが世評は全く逆で、マルサの女をピークにどんどん評判が落ちてる(例外的にミンボーの女は高評価)。特に大病人とマルタイ~はwebじゃ悪口ばっかり。俺、どっちも好きだし面白かったけどなあ。

そうなるとマルサ1作目とミンボーも観ない訳にいかないので、昨日借りてきて2本追加鑑賞。もうホント世評と真逆の評価。マルサ1作目は確かに面白いけど初期2作と同様の作風が色濃く残ってる印象であまり好きになれず、真価を発揮するのはマルサ2からだと思った。ミンボーは良かったな。よく出来てる分だけそのスジの方々も頭に来ちゃったんだろうね。

これも私的観測だけどマルサまでの三作品は作家性が強く気負い過ぎてて、観客の為と言うより自分の為に映画を作ってる印象。マルサ2以降の作品は妙な個性こそ残しつつ面白い作品に仕上げる事を目的として映画の為に映画を作ってる印象を受ける。要するに奇をてらう事以上に、効果的な演出を重視してると言うべきか。

例えば大病人で津川雅彦が主人公にガン告知をするシーンで、三國連太郎が車椅子をガタガタ言わせて震える演出とか初期作品には見られなかった物だし、素直にいいなあと思った。遺作マルタイもやたら評判悪いけど良かったな。銃器の演出が北野映画っぽい部分を含めて。

仮に大病人やマルタイを酷評してる人がお葬式やタンポポを絶賛してたら趣味の相違って事で片付けられるからそうであって欲しい。まあ多分そういう事だと思うけど。好きな人にとっては俺の全くついて行けなかったあの作風こそが魅力で、それがなければ物足りないんでしょ、多分。

ちなみにこの6作品一気観によって伊丹作品制覇まであと2本になってしまった。未見なのは静かな生活スーパーの女。折角だからそちらも近々観ておこうと思う。

2010年8月10日 (火)

佐伯清

昭和残侠伝シリーズ2作目唐獅子牡丹をたった今見終えたところ。1作目ほどハートに来なかったけど良い所は良い。

ちなみに東映任侠路線を支えた監督達は今も高く評価されてて、巨匠マキノ雅弘は言うに及ばず加藤泰や山下耕作等々アーティスティック・インプレッションの高い作家を挙げれば枚挙に暇がない・・んだけど、この昭和残侠伝シリーズを支えた一人の職人監督は世間的にスルーされてるのが現状。

その監督と言うのが全9作のシリーズ中5作のメガホンを取った佐伯清。不勉強な俺は昨日までこの人の映画を観た事がなかったんだけど、実際その作品に触れると良い仕事はしてる。ただ、非常に職人気質の強い人だったらしく、仕事にそつがないけど作家性は希薄。だから良い仕事をしつつも批評家筋に無視されちゃったんだろうな。

webで得た情報によると、この人は職人に徹しつつもしっかり自分を持ってて、昭和残侠伝1作目で高倉健と池部良が主題歌に乗せて殴り込みに向かう道行きシーンの撮影を頑なに拒否。歌謡映画じゃねえんだ!と言い放ち、助監と撮監に任せて現場から消えてしまったそうな。この道行きシーンが日本映画史に残る名シーンとして認知されちゃうのが皮肉な話。さすがに2作目以降はちゃんと自分で撮ったんだろうけど、webじゃ情報を掴めなかったので詳細は謎。

2010年6月22日 (火)

山本政志

実は俺、山本政志氏の映画は闇のカーニバルロビンソンの庭しか観てない。更に言えばその2本にせよ凄く感動はしてないから山本氏が尊敬するクリエイターという訳ではなかったりする。

ただ、その昔読んだストリート・ムービー・キッズという本に書かれた山本氏の記述を今も忘れる事が出来ない。

以下はそのまま引用・・

俺の人間に対する評価は、はっきりしていて、俺の映画を賞める人は善人で清く正しく顔が良く、足が長く神で、聖人で、どっから見ても完璧な人間。けなす奴は悪人で残虐で醜く、悪魔で顔がゆがみ、脱腸で足が臭く、小指がなく腕に注射のあとが目いっぱいあって、よだれをたらしながら歩く正真正銘の地球の恥だと思ってる。

この確固たる根拠のない自信こそがクリエイターには必要なんだと思う。俺はちょっと人の目を気にし過ぎてるな~

2010年6月11日 (金)

師匠セルジオ・レオーネ

師匠セルジオ・レオーネの映画を初めて観たのは中学の頃。テレビ放映されたドル三部作に触れてカッコいい映画を撮る監督だなと思ったけど陶酔するには至らず。

そして大学時代に夕陽をガンマンを見返した時、心の底から陶酔して師匠と崇め奉るに至る。何がツボだったのかと言えばマンガを越えたマンガ演出ですかね。物語中盤、イーストウッドとリー・ヴァン・クリーフがお互いの帽子を銃で弾き飛ばすシーンがあり、それがもうふざけんな!ってくらい百発百中。このマンガ演出こそが本場アメリカの西部劇をも飲み込んだマカロニウエスタンの原動力だな、と。

それはレオーネのトレードマークとも言える決闘シーンにも言える事で、二人の男が距離を置いて微動だにせず延々睨み合う。荒野の用心棒夕陽のガンマンはそれなりに淡泊で睨み合う時間はせいぜい1分(それでも1分!)。これが続・夕陽のガンマン/地獄の決斗では約5分、ウエスタンに至っては約8分睨み合ってる。しかも恐ろしい事に、動きがほどんとなく睨み合ってるだけなのに緊張感が持続してる。

この睨み合い演出は恐らく黒澤明の椿三十郎が元ネタ(ちなみに本家の睨み合いタイムは約30秒でほとんど無音)。これをもっとドラマティックに再現しようとしたレオーネの最終兵器がエンニオ・モリコーネの音楽で、これが入るとムサい野郎共の睨み合いはオペラ的に壮大なイメージへ変貌する。

またこれも特筆すべき事だけど、常識外れに長い時間睨み合った野郎共の戦いは1秒で終わる。8分持たせて1秒ってそんなの有りかよ!と思いつつ俺の脳内ではドーパミンが出まくる。抑揚とか緩急って言葉があるけど、その究極がレオーネ映画の決闘シーン。だから抑揚や緩急を何よりも重視する俺が陶酔したのも至極当然の話。

よく言われる事だけどドル三部作には深みのある人物描写がほとんど見受けられない。ただ、これは別にレオーネが人物を描けないって訳じゃなく、アホみたいに分かり易い勧善懲悪の物語を作る上でそういう要素を意識的に排除してるんじゃないかな。何しろ夕陽のギャングたちワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカではお釣りが来るほど濃厚な人物描写を魅せてくれる訳で。

当然ながら俺の映画ではレオーネ演出を多くリスペクトしてて逆襲!スケ番☆ハンターズ/地獄の決闘のクライマックスは続・夕陽のガンマンをそのまま再現。三輪ひとみさん扮するアキラの登場シーンはウエスタン、吉行由実さん扮する初代やくざハンター美樹の惨殺シーンは夕陽のガンマン・・といった感じで、重要なポイントはほとんどレオーネ映画が元ネタになってる。参考までに書くと前作やくざハンターのクライマックスは荒野の用心棒をベースにしてて、並べてみるとカットワークから画面構図まで一緒なので双方のDVDをお持ちの方がいたら一度比較していただきたく。