テオ・アンゲロプロス
ギリシャ映画の巨匠、テオ・アンゲロプロス監督が新作の撮影現場近くでバイクにはねられ脳内出血で亡くなったという衝撃のニュースが報じられた。本人は勿論のこと、我々シネフィルにとっても無念の一字。大好きな監督だけに交通事故とかじゃなく大往生して欲しかった。
アンゲロプロスと言えば長廻し。ただ、1カットが長いというだけならタルコフスキーも相米も溝口も長い。それでも群を抜いて全世界的に長廻しの巨匠と称されたのは1カットが長い事を強く自己主張した演出スタイル所以だろうね。
例えば旅芸人の記録。登場人物がいきなり観客に向けて語り出すんだけどこれが尋常な長さじゃなく5-6分間カットを割らずに話しかけてくる。霧の中の風景では強姦されてる(であろう)少女の乗ったトラックの荷台だけが延々映し出され、FIXじゃなくじわりじわりとトラックアップしてるから動きのほとんどない画面ながらも強烈な緊張感を生む。前記のタルコフスキーや溝口の場合、ここまで長廻しが長廻しである事を主張してないからボーッと観てると気付かない人も居る可能性があるけど、アンゲロプロスの長廻しは誰が観たって長い。そして、その長さが永遠に続けば良いと思わずにいられない程に心地良い。
個人的に好きなアンゲロプロス作品は先の旅芸人の記録や霧の中の風景、それと永遠と一日。狩人やアレクサンダー大王、シテール島への船出、こうのとりたちずさんでも忘れがたい。慎んでご冥福をお祈りします。